質的研究とSCATについて

質的研究とSCATについてblog

2026/05/11

質的研究とSCATについて

卒業論文・修士論文・看護研究・教育研究・社会福祉研究で、インタビューや自由記述をどのように分析すればよいか迷っている方へ

質的研究とSCAT分析の進め方

質的研究では、インタビュー記録、自由記述、観察記録、実践記録、フィールドノーツなど、数値だけでは捉えにくい経験や意味を分析します。 しかし、実際に研究を進める段階になると、 「どこからコード化すればよいのか」「分析結果をどのように論文に書けばよいのか」 で迷う方は少なくありません。

そのような質的データ分析の方法の一つとして用いられるのが、 SCAT(Steps for Coding and Theorization) です。SCATは、比較的小規模な質的データにも適用しやすく、発話や記述を段階的にコード化し、そこからストーリーラインや理論記述へと整理していく分析方法です。 看護研究、教育研究、心理学研究、社会福祉研究、医療福祉研究、地域研究、実践研究、卒業論文、修士論文などで用いられることがあります。

本記事では、 質的研究 SCATSCAT 分析SCAT 書き方質的データ分析 方法インタビュー分析自由記述 分析卒論 SCAT修論 SCAT看護研究 SCAT などを調べている方に向けて、SCATの基本的な考え方、分析手順、論文での書き方、注意点を具体的に整理します。

まず押さえたいのは、 SCATは単なる「感想の整理」ではなく、テキストデータから概念や意味の構造を段階的に導くための質的分析方法 だということです。発話を短くまとめるだけでは不十分であり、コード化、概念化、ストーリーライン、理論記述までを一貫して整理する必要があります。

質的研究とは何か

質的研究とは、人々の経験、語り、行動、意味づけ、価値観、関係性、実践のプロセスなどを、言葉や文脈を通して理解しようとする研究方法です。 数値化されたデータだけでは捉えにくい「なぜそのように感じたのか」「どのような過程で変化したのか」「当事者にとってその経験がどのような意味を持つのか」を明らかにすることを目的とします。

たとえば、患者が病気をどのように受け止めているのか、学生が学習困難をどのように経験しているのか、福祉職が支援場面でどのような葛藤を抱えているのか、地域住民がまちづくり活動をどのように意味づけているのかといったテーマは、質的研究と相性がよい領域です。 このような研究では、対象者の語りを丁寧に読み解き、 発言の背後にある意味や構造を分析すること が重要になります。

量的研究との違い

量的研究は、アンケート得点、検査値、尺度得点、人数、割合などの数値データを用いて、傾向や関連、差を統計的に検討する研究です。 一方、質的研究は、インタビューの語り、自由記述、観察記録などを読み解き、対象者の経験や意味づけを明らかにします。

量的研究が「どの程度か」「差があるか」「関連があるか」を検討するのに対し、質的研究は「どのように経験されているか」「どのような意味があるか」「どのようなプロセスがあるか」を明らかにすることに強みがあります。 そのため、研究目的に応じて、量的研究、質的研究、または両者を組み合わせた混合研究法を選択します。

質的研究で扱うデータ

質的研究で扱うデータには、半構造化インタビュー、グループインタビュー、自由記述回答、観察記録、実践記録、日誌、会議録、フィールドノーツなどがあります。 これらのデータは、単語の出現回数だけでなく、文脈、語りの流れ、対象者の立場、研究目的との関係を踏まえて解釈する必要があります。

SCATは、このようなテキストデータを段階的に整理し、発話や記述から概念を導き、最終的にストーリーラインや理論記述へとまとめる際に有効な方法です。

SCATとは何か

SCATとは、Steps for Coding and Theorizationの略称であり、テキストデータを段階的にコード化し、そこから理論的な記述を生成するための質的分析方法です。 日本語では、発話や記述の中から注目すべき語句を取り出し、それを言い換え、説明概念へと抽象化し、テーマや構成概念へと整理していく方法として理解できます。

SCATの特徴は、分析手順が比較的明確であり、分析過程を表として残しやすい点にあります。 そのため、卒業論文や修士論文のように、分析過程を指導教員や読者に説明する必要がある研究でも活用しやすい方法です。 また、インタビュー人数が多くない研究や、自由記述の回答数が限定されている研究でも、個々の語りを丁寧に扱うことができます。

ただし、SCATは機械的に表を埋めればよい方法ではありません。 テキストの文脈を読み取り、研究目的に照らして意味を解釈し、概念間の関係を検討する作業が必要です。 したがって、 SCAT分析では「手順の明確さ」と「解釈の妥当性」の両方が重要 になります。

SCATが向いている研究テーマ

SCATは、対象者の経験、意識、認識、葛藤、学び、支援過程、実践知などを明らかにしたい研究に向いています。 特に、少数のインタビューや自由記述を深く読み込み、そこから意味のまとまりを抽出したい場合に有効です。

インタビュー分析での活用

半構造化インタビューでは、対象者が自身の経験を自由に語ります。 SCATを用いることで、発話の中から重要な語句を抽出し、それを研究目的に沿って言い換え、概念化し、最終的にストーリーラインとしてまとめることができます。

たとえば、看護師の新人期における困難、保護者の子育て支援に対する認識、学生のオンライン授業経験、地域活動に参加する住民の動機などは、SCATによって語りの意味を整理しやすいテーマです。

自由記述分析での活用

アンケートの自由記述欄に書かれた回答も、SCATの対象になります。 自由記述は一つひとつの回答が短い場合もありますが、その中に回答者の不安、期待、評価、要望、経験が含まれていることがあります。

ただし、自由記述が非常に短い場合や、単語だけの回答が多い場合には、SCATよりも単純集計、内容分析、テキストマイニング、カテゴリ分類のほうが適していることもあります。 研究目的とデータの厚みに応じて、分析方法を選ぶことが重要です。

SCATの基本的な分析手順

SCATでは、まずインタビュー記録や自由記述データを読み込み、意味のまとまりごとにテキストを区切ります。 そのうえで、各テキストについて、注目すべき語句、テキスト外の言葉による言い換え、説明概念、テーマ・構成概念を整理します。 その後、抽出されたテーマや構成概念をもとにストーリーラインを作成し、さらに理論記述へと展開します。

段階 主な作業内容
データ準備 インタビュー逐語録、自由記述、観察記録などを整理する
テキスト分割 意味のまとまりごとに発話や記述を区切る
4ステップ・コーディング 注目語句、言い換え、説明概念、テーマ・構成概念を整理する
ストーリーライン作成 分析結果を一連の意味の流れとして文章化する
理論記述 得られた知見を抽象化し、研究目的に沿って理論的にまとめる

このように、SCATでは分析過程を段階的に示すことができます。 そのため、論文の方法部分では、どのようなデータを、どのような単位で区切り、どのような手順でコード化したのかを説明することが大切です。

SCATにおける4ステップ・コーディング

SCATの中心となるのが、4ステップ・コーディングです。 これは、テキストの中の語句をそのまま抜き出す段階から、研究者が解釈を加えて概念化する段階までを整理する作業です。

ステップ 内容
1. 注目すべき語句 テキストの中で研究目的に関係する重要な語句や表現を抜き出す
2. テキスト外の語句 抜き出した語句を、より一般的な言葉や研究上の表現に言い換える
3. 説明する語句 その発話や記述が何を意味しているのかを説明する概念を付ける
4. テーマ・構成概念 分析全体の中で位置づけられるテーマや概念として整理する

重要なのは、元の発話から離れすぎないことです。 研究者の解釈は必要ですが、対象者が実際に語っていないことを過度に読み込むと、分析の妥当性が弱くなります。 SCATでは、元データ、コード、概念、ストーリーラインのつながりを確認しながら進めることが大切です。

ストーリーラインの書き方

ストーリーラインとは、SCATによって抽出されたテーマや構成概念を用いて、分析対象となる経験や現象を一連の文章として説明するものです。 単にコードを並べるのではなく、対象者の経験がどのような流れを持ち、どのような意味の構造を持っているのかを文章化します。

たとえば、新人看護師の経験を分析する場合、「業務への不安」「先輩からの支援」「失敗経験による自己理解」「患者との関わりを通じた成長」といった構成概念が得られたとします。 ストーリーラインでは、これらをばらばらに示すのではなく、新人看護師が不安を抱えながら業務に向き合い、支援や失敗経験を通して実践的な学びを深めていく過程として記述します。

ストーリーラインを書く際には、 「誰が」「どのような状況で」「何を経験し」「どのように意味づけ」「どのような変化が生じたのか」 を意識すると、読みやすくなります。

理論記述の書き方

理論記述は、ストーリーラインからさらに一段抽象化し、研究対象となる現象について得られた知見を簡潔に整理する文章です。 研究の結論や考察につながる重要な部分であり、単なる感想や要約ではありません。

理論記述では、対象者の語りから得られた知見を、研究目的に照らして一般化可能な形に近づけます。 ただし、質的研究では統計的な一般化を目的としない場合が多いため、「すべての対象者に当てはまる」と断定するのではなく、 分析対象から見いだされた意味構造やプロセスとして記述することが大切です。

たとえば、「支援者は利用者の表面的なニーズだけでなく、語られにくい不安や関係性の揺らぎを読み取りながら支援方針を形成していた」といった形で、 分析結果から導かれる実践的・理論的な意味を表現します。

卒論・修論でSCATを使う場合の構成

卒業論文や修士論文でSCATを使う場合は、研究方法、分析手順、結果、考察の流れを明確にすることが重要です。 特に、質的研究では分析過程が見えにくくなりやすいため、SCATを採用した理由と具体的な手順を丁寧に説明する必要があります。

論文章節 記載する内容
研究方法 対象者、調査方法、インタビュー内容、倫理的配慮、分析方法を説明する
分析手順 SCATを用いた理由、テキスト分割、4ステップ・コーディングの進め方を記載する
結果 テーマ・構成概念、ストーリーライン、必要に応じて分析表の一部を示す
考察 先行研究との比較、研究目的との関係、実践的示唆、研究の限界を述べる

卒論や修論では、SCATの分析表をすべて本文に載せると長くなりすぎることがあります。 その場合は、本文では代表例を示し、詳細な分析表を付録に掲載する方法もあります。

看護研究・教育研究・社会福祉研究での活用

SCATは、看護研究、教育研究、社会福祉研究など、人の経験や支援過程を扱う研究と相性がよい方法です。 これらの領域では、対象者の語りに含まれる不安、葛藤、気づき、学び、関係性の変化を丁寧に読み取る必要があります。

看護研究では、患者経験、看護師の実践知、家族支援、終末期ケア、新人教育、チーム医療などのテーマで用いられることがあります。 教育研究では、学生の学習経験、教師の指導観、授業実践の振り返り、不登校支援、キャリア教育などが対象になります。 社会福祉研究では、相談援助、地域支援、障害者支援、高齢者支援、子ども家庭支援、アウトリーチ実践などの分析に応用できます。

これらの研究では、対象者の語りを単に分類するだけでなく、 語りの背後にある実践的意味や関係性の構造を明らかにすること が求められます。 SCATを用いることで、データから概念を導き出す過程を可視化しやすくなります。

SCATの結果記載例

SCATの結果を書くときには、抽出されたテーマや構成概念を示し、それらがどのようにストーリーラインに結びついたのかを説明します。 必要に応じて、代表的な発話を引用し、その発話からどのような概念が導かれたのかを示すと、分析の説得力が高まります。

  • 分析の結果、対象者の語りから「支援を求めることへのためらい」「周囲との関係性の再構築」「経験を通じた自己理解」の3つの構成概念が抽出された。
  • ストーリーラインでは、対象者が当初は不安を抱えながらも、他者との関わりを通じて自分の状況を意味づけ直していく過程が示された。
  • 理論記述として、困難経験は単独で克服されるものではなく、他者からの承認や支援を通じて再解釈される過程で意味を持つことが示唆された。
  • SCAT分析表の一部をTable 1に示し、各発話からテーマ・構成概念に至る分析過程を明示した。

結果記載では、コードやテーマの一覧だけで終わらせないことが大切です。 テーマ同士がどのように関係しているのか、研究目的に対して何が明らかになったのかを文章として説明する必要があります。

SCATでよくあるNG表現

SCATでよくある失敗は、分析表を作っただけで結果の説明が不足している、元データとコードのつながりが弱い、ストーリーラインが単なる要約になっている、理論記述が抽象的すぎる、といったものです。 これらは、質的研究の信頼性や読みやすさに影響します。

  • 発話を短くまとめただけで、概念化まで進んでいない
  • 研究目的と関係の薄い語句まで機械的にコード化している
  • 元の語りから離れすぎた解釈をしている
  • ストーリーラインがコードの羅列になっている
  • 理論記述が一般論になっており、データから導かれた内容が見えない
  • 分析表、本文、考察で用いる用語が統一されていない
  • 代表的な発話引用がなく、読者が分析の根拠を確認できない
  • SCATを採用した理由が方法章で説明されていない

SCATでは、手順を踏むこと自体が目的ではありません。 研究目的に照らして、対象者の語りからどのような意味や構造が見いだされたのかを、読者にわかる形で示すことが重要です。

スタットエージェントで対応できるSCAT支援

スタットエージェントでは、卒業論文、修士論文、博士論文、投稿論文、看護研究、教育研究、心理学研究、社会福祉研究、 医療福祉研究、地域研究、実践研究などに向けて、SCATを含む質的分析、インタビュー分析、自由記述分析、カテゴリ化、 分析表作成、ストーリーライン作成、理論記述、結果・考察の整理を支援しております。

特に、SCAT支援では、 逐語録の整理、意味単位の分割、4ステップ・コーディング、テーマ・構成概念の整理、ストーリーライン、理論記述、論文用の結果記載 まで、研究目的とデータ内容に応じて丁寧に確認いたします。

「インタビューを実施したが分析方法がわからない」「SCATの表の作り方がわからない」 「ストーリーラインがうまく書けない」「理論記述が抽象的になりすぎる」 「卒論・修論・投稿論文に使える形で質的分析を整えたい」といった場合でも、具体的にご相談いただけます。

よくある質問

Q1. SCATはどのような質的研究に向いていますか?

SCATは、インタビューや自由記述などのテキストデータから、対象者の経験や意味づけを丁寧に読み取りたい研究に向いています。 特に、少数事例を深く分析したい卒論・修論・看護研究・教育研究・社会福祉研究などで活用しやすい方法です。

Q2. SCATとテキストマイニングは違いますか?

違います。テキストマイニングは、語の頻度や共起関係などを機械的・数量的に整理する方法として使われることがあります。 一方、SCATは、テキストの文脈や意味を研究者が読み取り、コード化、概念化、ストーリーライン、理論記述へと進める質的分析方法です。

Q3. インタビュー人数が少なくてもSCATは使えますか?

研究目的やデータの内容によりますが、SCATは比較的小規模な質的データにも適用しやすい方法です。 ただし、人数が少ない場合には、対象者選定の理由、データの厚み、分析の妥当性、研究の限界を丁寧に説明する必要があります。

Q4. SCATの分析表は論文にすべて載せる必要がありますか?

必ずしもすべてを本文に載せる必要はありません。 本文では代表的な分析例を示し、詳細な分析表は付録に掲載する方法があります。 ただし、分析過程が読者に伝わるように、方法章や結果章で十分に説明することが大切です。

Q5. SCATの結果はどのように書けばよいですか?

抽出されたテーマや構成概念を示したうえで、それらをもとにストーリーラインを作成し、さらに理論記述として整理します。 コードの一覧だけで終わらせず、研究目的に対して何が明らかになったのかを文章で説明することが重要です。

まとめ|SCATは質的研究の分析過程を見える化する方法である

質的研究とSCATについて考えるうえで重要なのは、SCATを単なる表作成の手順として捉えないことです。 SCATは、インタビューや自由記述などのテキストデータを段階的に読み解き、注目語句、言い換え、説明概念、テーマ・構成概念を経て、ストーリーラインと理論記述へと展開する分析方法です。

SCATでは、 元データとのつながり、研究目的との整合性、コード化の妥当性、ストーリーラインの一貫性、理論記述の明確さ が大切です。 これらを丁寧に整えることで、卒論・修論・投稿論文・研究報告書において、質的研究の説得力を高めることができます。

スタットエージェントでは、SCAT分析、質的データ分析、インタビュー分析、自由記述分析、カテゴリ化、 ストーリーライン作成、理論記述、Methods・Results・Discussionの記述支援まで対応しております。 SCATの分析表を整えたい質的研究の結果を論文らしくまとめたい卒論・修論・看護研究・教育研究に使える質的分析を進めたい といった場合には、お気軽にご相談ください。

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