DEMATEL法と親和図法(KJ法)について
卒業論文・修士論文・博士論文・投稿論文・企業調査・政策研究で、複雑な要因を整理し、因果構造を可視化したい方へ
研究や実務調査では、複数の要因が複雑に絡み合っているテーマを扱うことがあります。 たとえば、組織課題、地域課題、医療・看護現場の改善、教育課題、顧客満足、デザイン経営、観光振興、防災、福祉サービス、マーケティング戦略などでは、単純な一対一の関係だけでは問題の全体像を説明できないことが少なくありません。
そのような場合に有効な方法として、 親和図法(KJ法) と DEMATEL法 があります。 親和図法(KJ法)は、自由記述、インタビュー、ワークショップで得られた意見や語りを整理し、意味の近い内容をグループ化する方法です。 一方、DEMATEL法は、要因同士の影響関係を数値化し、原因となる要因、結果として表れる要因、中心的な要因を可視化するための手法です。
特に、質的調査で得られた多様な意見を 親和図法(KJ法)で整理し、 そこで抽出された主要要因を DEMATEL法で因果構造として分析する という流れは、探索的研究から実証的研究へ進める際に有効です。
本記事では、 DEMATEL法、 親和図法、 KJ法、 因果構造分析、 要因分析、 質的分析、 アンケート分析、 専門家評価、 研究デザイン などを調べている方に向けて、DEMATEL法と親和図法(KJ法)の基本、両者の違い、組み合わせ方、論文での書き方、分析上の注意点を具体的に整理します。
まず押さえたいのは、 親和図法(KJ法)は「要因を見つけ、意味のまとまりをつくる方法」であり、DEMATEL法は「要因同士の影響関係を数値化し、構造として可視化する方法」 だということです。両者を組み合わせることで、自由記述やインタビューから得た複雑な知見を、研究論文や報告書で説明しやすい分析モデルへ整理できます。
DEMATEL法とは何か
DEMATEL法とは、複数の要因同士がどのように影響し合っているのかを明らかにするための構造分析手法です。 DEMATELは、Decision Making Trial and Evaluation Laboratoryの略称であり、複雑な問題を構成する要因間の直接的・間接的な影響関係を整理するために用いられます。
DEMATEL法では、まず分析対象となる要因を設定し、各要因が他の要因にどの程度影響を与えているかを評価します。 評価は、専門家、実務者、研究協力者などによるペア比較形式で行われることが多く、たとえば「要因Aは要因Bにどの程度影響するか」を段階尺度で回答してもらいます。
その後、得られた評価値を行列として整理し、直接影響だけでなく間接影響も含めた総合影響行列を算出します。 これにより、どの要因が他の要因を強く動かしているのか、どの要因が結果として影響を受けやすいのかを視覚的に表現できます。
DEMATEL法でわかること
DEMATEL法でわかるのは、要因の重要度だけではありません。 単に「重要な要因」を順位づけるのではなく、要因間の 影響の方向、影響の強さ、原因側の要因、結果側の要因、ネットワーク全体の中心的要因 を把握できる点に特徴があります。
たとえば、組織改革の研究で「人材育成」「管理職の意識」「評価制度」「職場風土」「離職意向」という要因がある場合、DEMATEL法を用いることで、どの要因が他の要因へ影響を及ぼす起点になっているのかを検討できます。 これにより、改善施策を考える際に、表面的な結果ではなく、根本的な原因に近い要因へ着目しやすくなります。
中心度と原因度の考え方
DEMATEL法では、一般に中心度と原因度という指標が用いられます。 中心度は、その要因がネットワーク全体の中でどの程度関係性を持っているかを示す指標です。 中心度が高い要因は、他の要因との関係が強く、問題構造の中核に位置している可能性があります。
原因度は、その要因が他の要因へ影響を与える側にあるのか、それとも他の要因から影響を受ける側にあるのかを示す指標です。 原因度が正の値であれば、比較的「原因側」の要因として解釈され、原因度が負の値であれば、比較的「結果側」の要因として解釈されます。
親和図法(KJ法)とは何か
親和図法(KJ法)とは、多数の意見、自由記述、観察記録、インタビュー内容、現場メモなどを、意味の近さに基づいて整理する方法です。 断片的な情報をカード化し、それらを比較しながら、似ている内容をまとめ、グループ名を付けることで、複雑な現象の構造を把握しやすくします。
親和図法(KJ法)は、質的研究や課題整理の初期段階でよく用いられます。 調査対象者の語りをそのまま読むだけでは、何が主要な論点なのかが見えにくい場合があります。 そこで、発言や記述を意味単位に分け、類似する内容を集めることで、研究テーマに関係する要因やカテゴリーを抽出します。
たとえば、学生の学習困難に関する自由記述を分析する場合、「授業内容が難しい」「質問しにくい」「課題量が多い」「将来像が見えない」「友人関係が不安」といった記述をカード化し、意味のまとまりに基づいて分類します。 その結果、「学習内容の理解困難」「相談環境の不足」「時間的負担」「キャリア不安」「対人関係の不安」などのカテゴリーを作成できます。
DEMATEL法と親和図法(KJ法)の違い
DEMATEL法と親和図法(KJ法)は、どちらも複雑な問題を整理するために有効ですが、役割は異なります。 親和図法(KJ法)は、主に質的データを整理し、要因やカテゴリーを抽出するための方法です。 一方、DEMATEL法は、抽出された要因同士の影響関係を数値化し、因果構造として可視化する方法です。
質的整理と構造分析の違い
親和図法(KJ法)は、自由記述やインタビュー内容に含まれる意味を整理する段階で力を発揮します。 まだ要因が明確でない段階、研究対象の全体像を探索したい段階、多様な意見を分類したい段階に適しています。
DEMATEL法は、要因が一定程度明確になった後に、その要因同士の影響関係を分析する段階で用いられます。 つまり、親和図法(KJ法)が「要因を見つける」方法であるのに対し、DEMATEL法は「要因間の関係を構造化する」方法であると整理できます。
組み合わせることで得られる利点
両者を組み合わせる最大の利点は、質的データから得られた現場感のある要因を、定量的・構造的に説明できる点にあります。 親和図法(KJ法)だけでは、どのカテゴリーが原因側にあり、どのカテゴリーが結果側にあるのかまでは明確にしにくい場合があります。 反対に、DEMATEL法だけでは、分析対象となる要因をどのように抽出したのかが弱くなることがあります。
そこで、まず親和図法(KJ法)で要因を抽出し、その後DEMATEL法で因果構造を分析することで、 「現場の声に基づいた要因抽出」と「要因間関係の可視化」 を一体的に示すことができます。
DEMATEL法とKJ法を組み合わせる分析手順
DEMATEL法と親和図法(KJ法)を組み合わせる場合、一般的には次のような流れで進めます。 まず、インタビュー、自由記述アンケート、ワークショップ、先行研究レビューなどから、分析対象に関する情報を収集します。 次に、得られた記述を意味単位に分け、親和図法(KJ法)によって類似する内容をグループ化します。
| 段階 | 主な作業内容 |
|---|---|
| 1. データ収集 | インタビュー、自由記述、文献、ワークショップ記録などを集める |
| 2. KJ法による整理 | 意味単位に分け、類似する内容をグループ化する |
| 3. 要因の抽出 | カテゴリー名を付け、DEMATEL法に用いる主要要因を決定する |
| 4. 影響関係の評価 | 要因同士の影響の有無と強さを専門家や対象者に評価してもらう |
| 5. DEMATEL分析 | 直接影響行列、総合影響行列、中心度、原因度を算出する |
| 6. 因果構造の解釈 | 原因側要因、結果側要因、中心的要因を読み解き、図表化する |
この流れを採用すると、探索的な質的分析と、構造的な定量分析を接続できます。 卒論・修論・博士論文では、研究目的、調査対象、要因抽出の手続き、評価者の属性、評価尺度、分析手順を明確に書くことで、分析の透明性を高めることができます。
研究テーマへの活用例
DEMATEL法と親和図法(KJ法)は、複雑な社会課題や組織課題を扱う研究に向いています。 特に、要因が複数存在し、それらが相互に影響し合っているテーマでは、単純な集計や相関分析だけでは十分に説明できない場合があります。
| 研究分野 | 活用例 |
|---|---|
| 経営学 | デザイン経営、組織改革、離職要因、顧客満足、DX推進要因の構造化 |
| 教育学 | 学習意欲、授業改善、不登校支援、教員志望低下要因の整理 |
| 医療・看護 | 業務負担、チーム医療、患者安全、看護師の心理的負担の要因分析 |
| 福祉・地域政策 | 地域包括ケア、子ども支援、障害者支援、自治体施策の課題構造分析 |
| マーケティング | 購買行動、ブランド評価、サービス満足度、口コミ形成要因の分析 |
たとえば、地域活性化の研究であれば、住民インタビューや自治体職員へのヒアリングを親和図法(KJ法)で整理し、「交通利便性」「地域資源の認知」「担い手不足」「情報発信」「行政連携」などの要因を抽出します。 そのうえでDEMATEL法を用い、どの要因が他の要因に影響を与えているのかを分析すれば、施策の優先順位を検討しやすくなります。
アンケート調査・専門家評価での使い方
DEMATEL法では、要因同士の影響関係を評価するために、アンケート調査や専門家評価を行うことがあります。 回答者には、各要因のペアについて「どの程度影響しているか」を評価してもらいます。 評価尺度は研究によって異なりますが、影響なしから強い影響までを段階的に設定することが一般的です。
評価者を誰にするかは、研究の妥当性に大きく関わります。 たとえば、医療現場の業務改善を扱う場合には、医師、看護師、管理職、医療事務職など、対象テーマをよく理解している人を評価者にする必要があります。 経営課題であれば、経営者、管理職、現場担当者、外部専門家などの視点をどう組み込むかを検討します。
親和図法(KJ法)で抽出した要因をそのままDEMATEL法に用いる場合には、要因数が多くなりすぎないように注意が必要です。 要因数が増えるほど、評価すべきペアの数も増えるため、回答者の負担が大きくなります。 そのため、研究目的に照らして主要な要因を選定し、調査票をわかりやすく設計することが重要です。
DEMATEL法の計算結果の読み方
DEMATEL法の結果を読むときには、単に数値の大小を見るだけでなく、要因間の関係性を構造として理解する必要があります。 代表的には、直接影響行列、総合影響行列、影響度、被影響度、中心度、原因度などを確認します。
| 指標 | 意味 |
|---|---|
| 影響度 | ある要因が他の要因へどの程度影響を与えているかを示す |
| 被影響度 | ある要因が他の要因からどの程度影響を受けているかを示す |
| 中心度 | 影響度と被影響度を合わせた値で、構造全体の中での関係の強さを示す |
| 原因度 | 影響を与える側か、影響を受ける側かを判断するための指標 |
| 因果構造図 | 要因間の影響関係を矢印やネットワーク図として可視化したもの |
中心度が高い要因は、問題構造の中で重要な位置を占めている可能性があります。 原因度が高い要因は、他の要因に影響を与える起点として解釈されやすく、施策や介入の優先対象になりやすい要因です。 一方、原因度が低く、被影響度が高い要因は、複数の要因の結果として現れる可能性があります。
論文でのMethods・Resultsの書き方
DEMATEL法と親和図法(KJ法)を論文で用いる場合には、Methodsで分析手順を明確に説明し、Resultsで要因抽出結果と因果構造分析結果を分けて示すと読みやすくなります。 特に、どのようなデータから要因を抽出したのか、誰が分類を行ったのか、どのようにカテゴリー名を決めたのかを明記することが重要です。
- 自由記述データまたはインタビューデータを意味単位に分割した。
- 親和図法(KJ法)により、類似する記述をグループ化し、主要カテゴリーを抽出した。
- 抽出されたカテゴリーをDEMATEL法の分析要因として設定した。
- 各要因間の影響関係について、専門家または対象者に段階尺度で評価を依頼した。
- 評価結果を行列化し、総合影響行列、中心度、原因度を算出した。
- 中心度および原因度に基づき、要因間の因果構造を解釈した。
Resultsでは、親和図法(KJ法)で抽出されたカテゴリー一覧、DEMATEL法による中心度・原因度の表、因果構造図を示すと効果的です。 Discussionでは、原因側の要因が研究テーマにおいてどのような意味を持つのか、結果側の要因がどのような現象として表れているのかを、先行研究や現場の文脈と関連づけて論じます。
分析時の注意点と限界
DEMATEL法と親和図法(KJ法)は有用な方法ですが、注意点もあります。 まず、親和図法(KJ法)では、分類やカテゴリー名の付け方に分析者の判断が含まれます。 そのため、分類基準を明確にし、複数名で確認する、代表的な記述例を示すなど、分析の透明性を高める工夫が必要です。
DEMATEL法では、要因間の影響関係が評価者の判断に基づくため、評価者の選定が重要になります。 専門性の低い回答者に複雑な要因間評価を依頼すると、回答の信頼性が低下する可能性があります。 また、DEMATEL法で示される因果関係は、実験研究のような厳密な因果効果を意味するものではありません。
したがって、論文では 「因果構造として解釈される関係」と「統計的に厳密に証明された因果効果」を混同しないこと が大切です。 DEMATEL法は、複雑な問題を整理し、仮説形成や施策検討に役立てるための方法として位置づけると、研究上の説明が適切になります。
スタットエージェントで対応できる分析支援
スタットエージェントでは、卒業論文、修士論文、博士論文、投稿論文、医学論文、看護研究、教育学研究、経営学研究、社会調査、自治体調査、企業調査に向けて、 DEMATEL法、親和図法(KJ法)、質的分析、アンケート分析、専門家評価、因果構造図の作成、結果の解釈、論文・報告書への記載支援を行っております。
特に、DEMATEL法と親和図法(KJ法)を組み合わせる場合には、 要因抽出、カテゴリー整理、調査票設計、評価尺度の設計、行列データの作成、中心度・原因度の算出、因果構造図の可視化、Methods・Results・Discussionの文章化 まで一貫して整理できます。
「自由記述をどのようにKJ法でまとめればよいかわからない」 「DEMATEL法の計算方法や表の作り方が不安」 「中心度・原因度の解釈を論文にどう書けばよいかわからない」 「博士論文や投稿論文で使えるレベルの分析設計にしたい」 といった場合でも、研究目的とデータ内容に合わせて具体的にご相談いただけます。
よくある質問
Q1. DEMATEL法とKJ法は同じ分析方法ですか?
同じではありません。 親和図法(KJ法)は、自由記述やインタビューなどの質的データを整理し、要因やカテゴリーを抽出する方法です。 DEMATEL法は、抽出された要因同士の影響関係を数値化し、因果構造として可視化する方法です。
Q2. KJ法で抽出したカテゴリーをDEMATEL法に使えますか?
使えます。 むしろ、質的データに基づいて抽出したカテゴリーをDEMATEL法の要因として設定することで、現場の実態に即した因果構造分析を行いやすくなります。 ただし、要因数が多すぎると評価負担が大きくなるため、主要要因に絞ることが重要です。
Q3. DEMATEL法は統計解析ですか?
DEMATEL法は、要因間の影響関係を行列として整理し、構造を分析する手法です。 一般的なt検定や回帰分析とは異なりますが、数値データを用いて影響関係を分析するため、研究報告書や論文では構造分析手法として扱われます。
Q4. DEMATEL法だけで因果関係を証明できますか?
厳密な意味での因果効果を証明するものではありません。 DEMATEL法は、専門家評価や調査結果に基づいて、要因間の影響構造を可視化する方法です。 実験研究や縦断研究のように因果効果を直接検証する方法とは区別して解釈する必要があります。
Q5. 卒論や修論でもDEMATEL法とKJ法は使えますか?
使えます。 ただし、研究目的、対象者、データ収集方法、要因抽出手順、評価者の選定、分析手順を明確にする必要があります。 指導教員の方針や研究領域の慣例に合わせて、無理のない分析設計にすることが大切です。
まとめ|DEMATEL法と親和図法(KJ法)は、複雑な要因を研究として整理するための有効な組み合わせである
DEMATEL法と親和図法(KJ法)は、複雑な問題を整理し、研究として説明可能な形にするための有効な方法です。 親和図法(KJ法)は、自由記述やインタビューなどの質的データから要因やカテゴリーを抽出する段階で役立ちます。 DEMATEL法は、その要因同士の影響関係を数値化し、中心度、原因度、因果構造図として整理する段階で役立ちます。
両者を組み合わせることで、 現場の声や質的データを起点にしながら、要因間の構造を可視化し、研究論文や報告書で説得的に示すこと が可能になります。 特に、経営学、教育学、医療・看護、福祉、地域政策、マーケティング、デザイン経営など、複数要因が絡み合うテーマでは有効です。
スタットエージェントでは、DEMATEL法、親和図法(KJ法)、質的分析、アンケート設計、専門家評価、因果構造図の作成、統計解析、論文・報告書への記載支援まで対応しております。 複雑な研究テーマを整理したい、 自由記述やインタビュー結果をKJ法でまとめたい、 DEMATEL法で要因間の影響構造を可視化したい といった場合には、お気軽にご相談ください。

